なぜ美術館が好きなのか(どうしてAI絵はなんか嫌なのか)

美術館に行くことが大好きだ。

 

子供の時は小さい兄弟がたくさんいることもあり、あまり家族で行くことは無かった。

 

高校生になった頃から、その当時いちばん仲が良かった友人と頻繁に出かけるようになった。

 

都内の美術館は高校生無料日という最高のシステムがある。

おかげで、めぼしい展示を見つけ次第ガンガン通いまくることができた。

 

大学生になってからは料金が一気に上がったけど、それでもキャンパスメンバーズの恩恵にあずかり、展示替えがある度に上野や六本木、横浜、とにかくあらゆるところに足を運んだ。

土日は混みすぎてまともに見られないので、美術館巡りのために全休まで作っていた。

 

社会人になった今でも、興味のあるものを見つけたら必ず行くようにしている。

ここ最近のチケットの値上がりは貧民にはなかなか厳しいが、それでもほぼ毎月必ずどこかには行っている。

 

今年に入ってから、「あれ、私って年間どれぐらい美術館や博物館行ってるんだろ…?」と思い、行くたびに写真を撮ってインスタのハイライトに纏めておくことにした。

 

2月の時点で既に7回行っているのだが、(そこまで多くないだろって突っ込みは一旦ナシで)ではなぜそんなにも美術館に吸い寄せられているのだろう…??

 

別に私は絵を描くのが好きなわけじゃない。

というか絵は一切描けないし、美術の成績も至って普通だった。

 

審美眼や知識もそんなに持ち合わせてないので、見たところで「この技法が〜」とか「この時代の作風は〜」みたいな講評をするわけでもない。いや、「できない」が正しい。

 

あー、これなんか好きだな、とかその程度である。

(これに関しては只只自分の無学さが悲しいので、もっと見る目を養いたい)

 

話が少し脱線したが、じゃあどうして美術館にそんなに通っているのか。

 

絵を見るだけなら別に今の時代、インスタや画集が山ほどあるし、わざわざ家から電車乗り継いで上野に行って2500円近く払う必要はないのだ。

 

それでも美術館に行くのは、没入感を求めているのだと思う。

 

企画展というのは基本的に、その人の人生をなぞりつつどうしてその画風が確立されたのか、なんでこういうものを描いてるのか、というのを順繰りに紹介してくれる。

 

これはその「画家」がテーマの企画展の場合(マティス展、モネ展、ゴッホ展、みたいな)の話だが、表現技法や時代の波をテーマにしたもの(最近だとキュビズム展、印象派展など)でも、なぜそれが流行ったのか、その昔はどういう時代だったのか、というバックボーンを含めて文化を紐解いてくれる。

 

芸術や文化、文学に触れる時、見ているのは単なるその作品の出来だけではなく、どうしてそれが作られたのか、そこに至るまでどんな物語があったのか、だろう。

 

だからなんの苦労もなくポンっと生み出されてしまったAIアートは忌避されるし、たとえばダンスやフィギュアスケートなんかにしても、その選手が努力してきた過程も込でみんな感動しているのではないか。

 

ロボットが全く同じダンスをしたとして、そこに感動があったとしても、それは「そこまで踊れるようになったロボットを作る人間の技術と試行錯誤の過程」に対するものであって、「ロボットの動きそのもの」への感動ではない。

 

もちろんAI絵だって人工知能が絵を描けるぐらい発展したという事実は紛れもなくすごいし、感動的だ。

だがそれは上述のロボットの踊りと同じように、バックにある人間の技術へのリスペクトであり、その技術に乗っかって出力だけされても、という話だろう。

 

モネの睡蓮を見る時、ゴッホの自画像を見る時、「すげー!上手すぎ!」だけじゃなく、「ああ、こういう人生送ったからこういうものを描くんだ…」「この時期はこんなふうに悩んでいたからこういう表現なんだ」と思うだけで面白さが段違いじゃなかろうか。

 

中野京子さんの『怖い絵』シリーズを読むと、時代の波や制作背景を知るだけで、「ただ綺麗な1枚の絵」だったものが一気に物語を魅せてくれるのがわかる。

 

美術館の展示は、そういった背景について余すことなく教えてくれるし、ただの文章だけでなく展示の配置や作り、見せ方でその「物語」に見る人を没頭させてくれる。

 

画集を読むのももちろん同様の楽しみがあるが、臨場感と没入感という点で美術館に軍杯が上がる。

 

著名な画家の脳内や、今に伝わる文化が生まれた激動の時代を垣間見たような気持ちにさせてくれる。

 

だから私は美術館に行くのが大好きだ。

 

絵を買えるわけじゃないのになんで見に行くの?絵描くの好きなの?とかたまに言われるが、そういうことではない。

 

きっと似たような理由で、文学館に行くのも好きだし、本を読むのも一生好きなんだろうな。